独立行政法人 国立病院機構 千葉医療センター
日本医療機能評価機構認定 第JC2182号
国立病院機構 千葉医療センター アドレス
  

リハビリテーション科



リハビリテーション医学は患者様を傷病治療の側面だけではなく、一個の人間として日常生活動作 (ADL :Activity of Daily Living)や生活の質(QOL : Quality of Life)をいかに良くするかということを主目的とした全人的総合臨床医学です。
 当院は日本リハビリテーション医学会研修施設に認定されています。


当リハビリテーション科では、整形外科(骨折、変形性関節症、脊椎・脊髄疾患など)・脳神経外科(脳梗塞、脳出血など)・ 神経内科・耳鼻咽喉科・精神科などをはじめとしたあらゆる診療科の患者様を対象として急性期リハビリテーションを提供しています。
 現在17名(理学療法士9名、作業療法士5名、言語聴覚士2名、受付1名)のスタッフが皆様の機能回復・家庭/社会復帰のお手伝いをさせて頂いております。


●理学療法(PT: Physical Therapy   理学療法士もPT: Physical Therapistと呼ばれます)
運動器疾患・脳血管疾患・廃用症候群などにより運動機能の低下した患者様に対して、その機能の改善を目的に運動療法、物理療法を行い、立つ、歩くなどの基本動作の獲得を目指します。
また手術前から介入し手術後の早期回復につなげていきます。


●作業療法(OT: Occupational Therapy  作業療法士もOT: Occupational Therapistと呼ばれます)
患者様が退院後に活き活きとした生活を送れるよう、仕事・遊び・生活動作など様々な作業を通して、上肢機能の回復や日常生活動作の向上をはかります。
また発症直後・手術直後より介入することで離床の機会を増やし、日常生活動作の早期獲得につなげていきます。
その他、入院患者様を中心に変形性股関節症術後や乳がん術後などの日常生活指導も行っています。


●言語療法(ST: Speech Therapy   言語療法士もST: Speech Therapistと呼ばれます)
言語療法とは、何らかの原因でことばや聞こえ、食物を口から食べることに障害を持つ方の機能回復や発達促進の援助を行うことをいいます。
当院では、入院患者様を対象に、主に脳損傷や頭頚部がんにより生じた言語障害(失語症・構音障害、発達障害など)、摂食嚥下障害に対するリハビリテーションを実施しています。
また高次脳機能障害(注意・記憶・遂行機能障害など)評価・訓練・支援なども行います。


特色


当リハビリテーション科の特色

●チーム医療と地域連携
緩和ケアチーム・呼吸ラウンドチーム・栄養サポートチームなどに参加し、定期的に医師・看護師・ケースワーカーと合同カンファレンスを開き、 早期に社会復帰できるようチーム医療の連携に努めています。転院された場合も地域連携パスを活用し、転院先と情報共有できるよう地域連携をはかっています。




●超急性期リハビリテーション
傷病による廃用は超急性期から既に始まっています。ICU(集中治療室)症候群と呼ばれる特異的なせん妄が日本でも1980年代から認識されるようになり、2001年にはICUせん妄評価スケール(ICU-CAM)が開発され、2006年にはICU患者に長期的な認知機能および身体機能の低下が高率に生じることが判明し、 ICU関連筋力低下(ICU-AW : ICU-Acquired Weakness)やポストICU症候群(PICS : Post-ICU Syndrome)という概念が 提唱されるようになりました。急性期リハビリテーションの最近の主要課題はこの超急性期リハビリテーションをいかに 安全かつ確実に提供し長期にわたる心身の機能低下を予防するかということに移ってきています。当院では ICU(集中治療室)に専属の理学療法士を置き、入室時から鎮静評価尺度(RASS scale)に基づき過鎮静をなるべく減らしながら 積極的に超急性期リハビリテーションを実施することにより、早期離床、早期回復を実現できるよう努めています。


●がんのリハビリテーション
米国では既に1970年代にがんのリハビリテーションが体系化されましたが、我が国はそれに遅れること30年の2000年代に漸く 体系化が開始されました。我が国の死因は1980年以来悪性新生物が第1位を維持しており、 現在日本人の2人に1人ががんに罹患するとされています。一方でがん治療の発展も目覚ましく、 がんサバイバーは男性で4人に3人、女性で7人に6人まで増え、今やがんは治癒する時代となっています。 当院は地域がん診療連携拠点病院に指定されており、がん診療に力を注いでいます。がんのリハビリテーションは術前より 集中的な介入を行うことが可能であり、周術期管理を安全なものとし早期離床を図るために必要不可欠な診療です。 具体的には手術侵襲度の高い食道がんや肺がん等に対する周術期呼吸理学療法、乳がんに対する肩関節可動域訓練・リンパ浮腫療法、頭頚部がんに対する肩関節可動域訓練や音声訓練・嚥下リハビリテーションなどを行います。現在のところがんのリハビリテーションの提供は保険診療上入院患者様のみに限定されますが、がんサバイバーに対する社会復帰支援から緩和的リハビリテーションに至るまでの幅広い診療を長期にわたり提供することが可能です。がんのリハビリテーションの提供には資格が必要ですが、当院ではスタッフ全員が有資格者です。また当院リハ医は受講者に資格を付与するためのがんリハ研修会を企画運営する資格を有しています。


●心臓リハビリテーション
超高齢化社会を迎え、心疾患は1990年代後半に脳卒中を抜き去り、我が国の死因の第2位に躍り出ました。とりわけ心不全に罹患する人はこの20年で2倍の120万人に膨れ上がり、「心不全パンデミック」と呼ばれる時代に突入しています。心不全は増悪と緩解を繰り返しながら徐々に進行していく疾患であり、放置すると確実に寿命を縮めることになります。したがって良好な状態をいかに維持していくかが重要です。心臓リハビリテーションは従来のリハビリテーションが掲げた“Adding Life to Years(ADLやQOLの改善)”に加え“Adding Years to Life(生命予後の改善)”をも提供できることが立証されており、疾患によっては薬物療法に匹敵する効果が示されています。このように、心臓リハビリテーションは呼吸リハビリテーションとともに内部障害のリハビリテーションの中核を担っています。当院では循環器内科と連携し、3名(医師1名含む)の心臓リハビリテーション指導士を中心に安全で質の高い包括的心臓リハビリテーションを提供しています。将来的には予防医学的見地から心臓リハビリテーション外来を開設し、地域の皆様の健康維持に貢献したいと考えています。


●摂食嚥下リハビリテーション
脳卒中・頭部外傷等の急性傷病やパーキンソン病・多系統萎縮症・認知症といった緩徐進行性疾患、術後の機能不全や廃用、 口蓋裂や脳性麻痺・筋ジストロフィー等の先天性疾患、高齢による機能低下(サルコペニア)や誤嚥性肺炎等々、摂食嚥下障害を きたす病態は極めて多岐にわたります。当院では耳鼻咽喉科と連携し、ST2名を中心として摂食嚥下障害を生じている 入院患者様の評価・訓練を行っています。具体的にはビデオ嚥下内視鏡(VE:Video-Endoscopy) 検査やビデオ嚥下造影(VF: Video-Fluorography)検査により嚥下機能を評価し、病態に応じて間接(食事を用いない) 訓練および直接(食事を用いる)訓練を行います。摂食嚥下リハにおける当リハビリテーション科のポリシーは、1)食の質より 安全面を重視する 2)消化管をなるべく使う 3)安定して長続きのする現実的ゴールを提供する 4)簡単にギブアップしない  ということです。嚥下機能改善にはさまざまな手練手管を用い、適用があれば外科的治療(喉頭挙上術・輪状咽頭筋切断術など) も検討します。また、摂食嚥下機能改善においてはポジショニング・栄養・基礎体力などたくさんの解決すべき課題があり、
多職種連携によるチーム医療を推進しています。近年では日本人の死因の第3位を占める高齢者肺炎(誤嚥性肺炎だけ抽出すると第7位)に臨床の場で関わる機会が増えています。 高齢者がひとたび肺炎に陥ると容易に基礎体力が低下し、摂食嚥下機能の改善も困難となり、更に肺炎に罹患しやすくなるという悪循環が生じます。 当リハビリテーション科では摂食嚥下に不安のある御高齢の方々を外来診察し、機能評価および適宜訓練・助言をすることで地域の皆様の肺炎予防に貢献したいと考えています。


●認知リハビリテーション
 認知リハビリテーションの対象は、頭部外傷を中心とした若年者に好発する高次脳機能障害とアルツハイマー病を中心とした高齢者に好発する認知症に大別されます。高次脳機能障害は“見えない障害”といわれ、一見健常に見える人々が注意・記憶・遂行機能や情動の障害ゆえに家庭内で孤立し社会復帰ができないという問題が1990年代に露呈してきました。我が国における高次脳機能障害者への支援は2001年度に開始された高次脳機能障害支援モデル事業により本格化し、その後支援普及事業へと引き継がれ、現在は各都道府県に設置された支援拠点機関を中心に全国50万人といわれる高次脳機能障害者への支援が展開されています。一方認知症に対する支援は2012年のオレンジプランから2015年の新オレンジプランに引き継がれ、認知症サポート医養成・認知症コーディネータの設置・初期集中支援チームの導入等、2025年には約700万人に膨れ上がると推定される認知症への対策を展開しています。高次脳機能障害・認知症共に確立されたリハビリテーションは存在せず、多職種連携・地域医療連携による包括的支援が必要不可欠となります。当リハビリテーション科は急性期医療の立場から両者の包括的支援に積極的に参加しています。またリハビリテーション科外来では年余にわたる医療福祉支援も行っています。更に、“Treatable dementia”=特発性正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫などの「治せる認知症」に対しては脳神経外科と連携し、認知機能やADLの可及的改善を目標とした積極的なリハビリテーションを提供しています。


●痙縮・痙性斜頸・片側顔面痙攣に対するボツリヌス毒素療法
「痙縮」とは、筋肉が緊張しすぎて突っ張り動かしにくくなったり、勝手に動いてしまう状態をいいます。脳卒中をはじめとする脳損傷や脊髄損傷、あるいは遺伝性痙性対麻痺などの遺伝性疾患に生じます。 「痙性斜頸」とは首が傾く・捻じれる・震えるといった不随意運動の一種です。「片側顔面痙攣」は片方の顔面の筋肉が自分の意思とは関係なく勝手にぴくぴく動いてしまう状態をいいます。いずれの病態にもボツリヌス毒素療法の適用のある場合があります。ボツリヌス毒素は神経筋接合部でアセチルコリンという物質の放出を妨げることで、神経から筋肉への命令を弱める働きがあります。ボツリヌス毒素療法とは、緊張した筋肉に適量のボツリヌス毒素を注射することで適正な筋緊張状態をつくりだす治療法です。治療効果は3か月程度なので繰り返す必要がありますが、その間に徐々に症状が改善しやめられる場合もあります。難治性の場合には、いずれも脳神経外科的治療(痙縮:バクロフェン持続髄注療法 痙性斜頸:深部脳刺激療法 片側顔面痙攣:微小血管減圧術)の対象となる可能性がありますので、脳神経外科と連携して治療にあたっていきます。


リハビリテーション医学は、生活のあらゆる場面に遍く存在し、ハンディキャップを負う人々に寄り添う全人的総合臨床医学です。皆様どうか御活用ください。


当リハビリテーション科の診療実績


リハビリテーション科 2020~2023年度
疾患別リハビリ処理件数

2020年度2021年度2022年度2023年度
脳血管353410473362
運動器688465403390
心大血管137153122123
呼吸器174217274367
廃用271472585459
がん219426407326

当リハビリテーション科スタッフの資格一覧


心臓リハビリ指導士
     保坂 正太
     一色 滉平

呼吸療法認定士
     三浦 啓輔
     曽根 浩司
     丸山 比奈与
     鈴木 光流

リンパ浮腫療法士
     池田 理英
     河本 江梨

骨粗鬆症マネージャー
     大釜 由啓

医師・スタッフ紹介

  
医師名専門分野所属学会・認定
医長大賀 優リハビリテーション医学全般
高次脳機能障害
痙縮(ボツリヌス毒素療法・ITB療法)
摂食嚥下障害
心臓リハビリテーション
がんのリハビリテーション
医学博士
日本リハビリテーション医学会リハビリテーション専門医・指導医
日本プライマリケア連合学会認定医・指導医
日本医師会認定産業医
難病指定医
厚生労働省認定認知症サポート医
義肢装具等適合判定医
千葉市指定身体障害者福祉法第15条指定医(肢体不自由,音声・言語機能障害,咀嚼機能障害)
産科補償制度診断協力医
ボツリヌス毒素製剤(A型・B型)講習修了
日本心臓リハビリテーション学会認定心臓リハビリテーション指導士
日本摂食嚥下リハビリテーション学会摂食嚥下リハビリテーション認定士
がんのリハビリテーション研修企画者研修修了
理学療法士9名、作業療法士5名、言語聴覚士2名
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